不眠やアレルギーなど健康被害だけでなく、田畑を食い荒らす害獣は、農家にとってまさに死活問題です。
農林水産省によれば、鳥獣による被害総額は約156億円(令和4年度)と依然高く、農業を続ける気持ちが削がれ、離農を助長しています。
そのため自治体によっては、個人や団体に対して、害獣駆除にかかる費用を一部補助する制度が整えられています。農水物を守るための補助金が一般的ですが、中には個人向けに民家を守るために交付される補助金もあります。
そこで今回は「害獣駆除に補助金や報酬は出るのか?」「どういった場合にどれだけ受給できるのか?」具体的な自治体の例を交えながら見ていきたいと思います。
これを読めば、あなたが補助金の対象になるのか?どのような条件が揃えば補助されるのか注意すべきポイントが分かりますよ。ぜひ参考にして見てください。
害獣駆除と狩猟の違い
害獣駆除と似た行為に、狩猟があります。どちらも「鳥獣を捕獲する」という点では同じですが、目的が異なるため、補助金の有無などが異なります。
害獣駆除 | 狩猟 | |
目的 | 田畑を食い荒らす鳥獣を追い払うため | 趣味や田畑や民家を守るため ※個人によって異なる |
費用 | 補助金や報奨金が受け取れる可能性あり | 狩猟税を納める義務あり |
期間 | 許可された期間で実施 | 11月15日〜翌年2月15日頃まで ※地域によって前後する |
資格 | 狩猟免許が必須 | 狩猟免許が必須 |
害獣駆除でもらえる補助金の概要は?
害獣駆除の補助金制度は、自治体ごとに内容が異なります。対象となる害獣の種類、何に使えるのか、必要な書類や手続きなど、具体的な制度の内容はそれぞれです。
たとえば田畑がその自治体にあるからと言って、補助金を受けられないケースもあります。
まずは補助金の概要を知り、ご自身が該当しそうか見ていきましょう。
事前の申請が必須
自治体が交付する害獣駆除の補助金は、基本的には新規に害獣対策する場合に適応されます。事前に計画や設備の見積り、対策前後の写真を提出するなど、求められる申請ステップを踏むことで、給付が認められます。
安くはない駆除コストを少しでも抑えるためにも、「対象になるかどうか」を事前にチェックし、手続きの内容を漏れなく把握していきましょう。
害獣駆除補助金の対象者
自治体が補助金を出すため、まず一つ目の条件は「その自治体に住む方で、自治体の管轄するエリアの害獣駆除」であることです。その地域に住む方でも、別の自治体エリアを駆除する場合は補助金は交付されません。
ただし、自治体によっては、住所に関係なく、自治体内で農業や林業、水産業を営んでいれば良いケースもあります。詳しくは、駆除エリアの自治体で確認してみて下さい。
また、二つ目の条件として「農地や水田を保有」していたり、「水産業を営んでいる」場合に限っていることも多いです。
ただし、自治体によっては、個人宅の害獣被害を交付対象としている場合もあります。ぜひお住まいの自治体に問い合わせてみて下さい。
害獣駆除補助金の内容
害獣駆除にかかる費用がすべて対象になるかと言えばそうではありません。公金の補助を受ける訳ですから、使途は限定され、証明する書類の準備も必要になります。
たとえば、
- 鳥獣対策向け設備の購入費(ポールや防止柵、電線など)
- その他、防止柵と同様の効果があると認められる資材の購入費
といった条件が求められます。
他にも、補助金が充当できる設備の大きさや器具をより具体的に指定している自治体もあります。
補助金の対象となる害獣
対象となる害獣についても自治体で定めています。基本的には、田畑を荒らす野生の鳥獣が対象となり、一般的に以下のような害獣が該当します。
- ハクビシン
- アライグマ
- 熊
- 猿
- 鹿
- イノシシ
- カラス
各自治体では、動物の種類を細かく指定している場合もあります。具体的に補助金の対象となる害獣を、お住まいの自治体で確認してみましょう。
必要な書類と手続き
害獣駆除の補助金申請には、概ね以下のような書類を求められます。
- 交付申請書
- 設置詳細図
- 事後報告書
- 該当する設備・資材購入費の領収書の写し
- 駆除した鳥獣や設置前後の写真
<事例>害獣駆除の補助金がある自治体
それでは、害獣駆除のために補助金を支給している自治体の例を見ていきましょう。
対象者 | 交付対象 | 補助金額 | 必要書類 | |
東京都八王子市 | 〇市内に耕作地を所有する者 〇市内に住所を有する者が農地を借り受けている者 で、継続的に農産物を生産している者 | 〇電気柵一式 パワーユニット、ワイヤー等を含む電気柵一式 〇防護柵一式 トタン板、金網柵、ネット、支柱、結束線、単管パイプ、アンカーピン等からなる防除柵一式。 | 〇電気柵一式 購入に要する費用の1/2の額(上限額5万円) 〇防除柵一式 購入に要する費用1/2の額(上限額5万円) | 〇交付申請書 〇位置図 〇設置詳細図 〇設置前の耕作地の写真 〇見積書 |
神奈川県箱根町 | 〇町内に住居または敷地を所有している方 〇設置した防止柵を適正に維持できる方 | 〇防止柵の購入費(設置費用などは対象となりません) | 〇個人 購入費用の2分の1(限度額は2万円) 〇自治会 購入費用の3分の2(限度額は3万円) 〇事業者 購入費用の1/3(限度額は2万円) | 〇申請書 〇防止策を設置した場所の地図と写真 〇領収書など |
静岡県磐田市 | 【目的】個人(管理組合)法人で、野生鳥獣による住宅への侵入防止や田畑等の農林産物への被害を防止するため | 〇住宅内への飛来、侵入を防止するために有効な資材等の購入に要する経費 〇捕獲の許可を受けた業者に依頼し、捕獲するための委託料 〇農作物等の獣被害を防止するため及び農業用施設の管理に有効な資材等(新規資材等に限る)の購入に要する経費 | 〇住宅被害防止対策事業:1/3以内 〇農林産物被害防止対策事業:1/2 以内 | 〇交付申請書 〇事業計画書 〇収支予算書 〇変更承認申請書 〇完了報告書 〇請求書 |
静岡県沼田市 | 〇沼田市に住所を有する人 〇市内に存する農地の所有権または使用収益権を有する農業者 〇市税等に滞納がない人 〇過去(8年以内)に同一の農地で補助金の交付を受けていない人 | 〇事業費の1/2以内 〇1軒で申請する場合は補助金の上限額は5万円 〇2軒以上で申請する場合は補助金の上限額は10万円 | 交付申請書 |
害獣を勝手に駆除・捕獲するのは危険!
防護柵などを設置して、ご自身の土地や畑を害獣から守る分には問題ありませんが、害獣を捕獲・駆除するためには、免許や事前申請が必須です。
許可なく捕獲・駆除した場合、「鳥獣保護法」違反にあたり、罰せられる場合があります(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)。
※許可がある場合でも、対象期間外に実施した場合も同様です。
ただし、ドブネズミやクマネズミのように、衛生面で重大な悪影響を及ぼす可能性のある害獣については、狩猟免許がなくても駆除することができます。
害獣駆除に必要な免許
狩猟免許は、以下の4種類に分けられ、捕獲または駆除できる方法が明確に決まっています。
<害獣を捕獲するために必要な4つの免許>
- 網猟免許:網を使って捕獲できる
- わな猟免許:罠を使って捕獲できる
- 第一種銃猟免許:銃器を使って駆除できる
- 第二種銃猟免許:空気銃を使って駆除できる
第一種銃猟免許は、銃器が取り扱える技術が、また第二種銃猟免許には、空気銃が取り扱える技術がそれぞれ必要です。
害獣駆除の免許を取るには?
狩猟免許の試験は免許の種類に応じて、毎年複数回行われています。狩猟免許は以下の流れで取得することができます。
<狩猟免許取得の流れ>
1.お住まいの都道府県の当該部署に「狩猟免許申請書」を提出
2.狩猟免許申請手数料(1免許あたり5,200円)を支払う
3.狩猟免許予備講習会の受講(希望者のみ)
4.狩猟免許試験を受験
狩猟免許試験は、「知識試験」「適正試験」「技能試験」の3分野に分かれています。知識試験と技能試験では7割以上の得点することが求めれます。また適正試験は、年齢や病歴など全項目の基準をクリアすれば合格です。
狩猟試験の合格率は8~9割なので、きちんと対策しておけば合格できる可能性は高いでしょう。
狩猟免許の有効期限
狩猟免許の有効期限は、約3年です。更新には、お住まいの都道府県で実施される講習会に参加し、適性検査に合格しなければいけません。また1免許あたり2,900円の手数料を納める必要があります。
害獣駆除は猟友会への入会が基本
晴れて試験に合格し、許可を取得すれば、害獣を駆除できるようになります。とはいえ、初年度や資格取得後まもない間は、地元の猟友会に入会して、指導を受ける方が良いです。
入会すると、許可申請に必要な書類準備や代行、害獣駆除のための研修会、狩猟用火薬の無許可譲受を受けられるなど、実践のための準備を整えることができます。
害獣駆除は専門の業者に依頼するのがオススメ!
害獣駆除は資格がないと実施することができません。しかし、駆除が必要となってから、勉強し始め、受験の準備を進めたのでは、被害が拡大することになりかねません。
さらに狩猟免許だけでは、実際には猟友会での訓練を積まないと実践で使えないことを考えると、タイムリーに駆除業者に依頼してしまうのが得策です。
害獣駆除業者を選定するポイント
数ある害獣駆除業者の中から、自分に合った業者を選定するポイントは以下です。
<害獣駆除の業者を選定するポイント>
・実績や口コミは良いか?
・現状調査に基づいた、納得できる見積りになっているか?
・一時的な追い出しにとどまらず、再発防止を含めた施工をしてくれるのか?
・希望をヒアリングし、予算に応じた対応策を出してくれるか?
・保証はついているか?
初めて駆除業者を選ぶ場合、安いからと費用面に目がいってしまいがちですが、後悔することになりかねません。安さを吊り文句に、後から高額請求されて泣きを見るケースが後を絶ちません。
実績や口コミから、いくつか良い業者を選定した後は、無料の現地調査と見積りを依頼しましょう。現場の足跡をいっしょに確認しながら、特定した侵入経路を説明するなど、スタッフが調査結果を分かりやすく丁寧に説明してくれるかも重要です。
屋根裏など同行しづらい場所は、スタッフが撮影した写真を見せながら説明してくれます。
その上で、見積りの妥当性は、複数の業者から相見積もりをもらうことで、比較できます。ご自身の予算もありますので、無理な高額請求を押し付ける業者ではなく、納得できる提案をしてくれる駆除業者を選ぶことができます。
相見積もりは手間がかかりますが、納得のいく根本解決が大切です。害獣駆除はプロに任せて、大切な家屋や農作物を守り、安心できる生活を取り戻しましょう。
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